先日 「AWS Summit Tokyo 2014」 を聴講した。いくつかのセッションで、それぞれ興味深い話を聞くことができた。
その中で、オリックス野球クラブ株式会社、専務取締役事業本部長の湊通夫氏によるセッション 「オリックス・バファローズの挑戦! AWSを活用したファンビジネスのご紹介」 が、印象に残ったので、メモがてら記録しておく。
セッション自体を一言でまとめると「オリックスのファンクラブ向けCRMシステムを、AWS上で構築して硬化が上がった」というものだった。
自分にとっては、AWSの話もそれなりに興味深かったが、それ以上に、プロ野球球団のファン向けシステムがどのように構築されたのか、という部分が興味深かった。
オリックスは、12球団の中では、ファン向けのCRMの整備が最も遅れていたそうだ。2013年、ファンクラブ向けのシステム開発に本格的に乗り出し、CRMシステムを構築したとのこと。最後発ゆえに、他球団の良い所を積極的に盗んで、実装をしていったそうである。自分はプロ野球のファンクラブに2つ登録している。そこから比較しても、オリックスのファンクラブ運営施策は、他球団の良い所をよく研究している、と感じられた。ポイントシステムは西武ライオンズがやっている施策そのものだ。
個人的に特におもしろかったのは次のとおり:
- 会員の住所情報を元に、交通広告の出稿場所の決定に役立てた。どの沿線が効果的か、より具体的に把握できるようになった
- 会員ごとのグッズ購入が分かるようになり、会員向け施策をより具体的にうてるようになった
- ファンクラブ事業は、球団経営の5つの要素のうちの一つ(チケット部門、飲食・グッズ、宣伝、イベント、ファンクラブ)
- オリックスのファンがどのような人たちなのか、が見えるようになった
などなど。
要点は「自分たちのファンはどのような人たちなのか」を可視化できるようにった、ということ。それによって、各種施策が根拠のあるものになった、という点。
オリックスの話を聞いていて、ハーレーダビッドソンの元社長、奥井俊史氏の著作を思い出した。オリックスが目指した「自分たちのファンはどのような人たちなのかを知りたい」という思いと、それを実現するために構築したCRMシステムは、奥井氏がハーレーダビッドソンジャパンで考えたこと、そして構築したCRMシステムそのものだ。
なぜハーレーだけが売れるのか (日経ビジネス人文庫 ブルー み 2-3)
自分を振りかえると、仕事上で「誰が自分たちのサービスのファンなのか、顧客なのか」という情報は、部分的には知っていても、網羅的には把握できていない。
言葉にするのはたやすいが、「自分たちの顧客がどのような人たちなのかを正確に把握する」ことの難しさを改めて思いだした。
以下、当日のスライドの抜粋。
当日の講演をまとめた記事があったのでリンクを貼っておく。エンジニアtypeの記事。
「観客動員、前年比120%。オリックス・バファローズのファン離れを解消したクラウド活用戦略~AWS Summit Tokyo 2014レポ」