コミュニティデザインのプランと実践 その4 注意するべきこと

この原稿は「DevRel Advent Calendar 2017」の18日目の記事です。

前項では、コミュニティデザインの実際の実行フェーズについて記述しました。 今回は、コミュニティサポート担当者 (DevRel担当者、コミュニティマネージャーなど) が気をつけたい項目について記述します。

注意点

コミュニティを運営・サポートしている皆様は、きっとそれぞれに独自のルールや規律を作って、日々業務にあたっていると思います。

ここでは、自分自身が日頃気をつけている点について、列記してみます。

参加者に優劣・階層を作らない

コミュニティの世界は、すべてがフラットな世界です。大企業に所属する人・決済権があり大きな金額を動かせる人も、学生さんも関係ありません。老若男女問わず、階層がない世界です。

そんなコミュニティの世界では、純粋に「人として互いを尊重し合えるか」ことが大事です。

たとえ社会的な肩書がどうであれ、コミュニティの世界では通用しません。逆に、運営者・サポート担当者が、社会的なステータスによって扱いを変えたり、優遇することはあってはならないことです。

参加者に優劣・階層を作ると、そこからコミュニティは崩壊していきます。

コミュニティの間口を狭めない

ある一つのテーマについてコミュニティを形作り、集まっていると、どうしても話題がマニアックかつ先鋭化していきます。

この状態は、言葉を変えると「コミュニティが成熟している」ということもできるでしょう。

一方で、「コミュニティに興味があるけど、参加しようかどうか迷っている」という人たちにとっては、入りづらく、マニアックな集団に見えることがあります。

コミュニティが先鋭化していくと、参加する人たちはいつも同じ顔ぶれとなり、やがて少しずつ参加者が減っていき,緩やかに衰退に向かいます。

コミュニティを運営・サポートする人は、常に新規参加者が入りやすく、フレンドリーな雰囲気を作ることに気を使う必要があります。

相手に敬意を払える人を大事にする

前出の項目と相反する話になりますが、関係を形作る相手を間違えると、コミュニティに混乱が生まれることがあります。

コミュニティに参加する理由はさまざまですが、中には

  • 流行っているコミュニティだからちょっと参加する
  • コミュニティの人脈を、自分のものとして奪いとろうとする
  • 参加者を (自社ビジネスの) 顧客名簿としてしか見ない

など、コミュニティという場に対して敬意を払わず、コミュニティから情報と人脈だけを抜き取って、自分のメリットのためだけに参加する人もいます。

コミュニティの参加者は、それぞれ自分自身に対するメリットを感じて参加しています。それらを否定してはいけません。

一方で、「サークルクラッシャー」のような人たちとコミュニティを形作ると、ほどなくコミュニティ内に混乱が生まれることは想像に難くありません。

互いに敬意を払いあえる人。ビジネスの前に人間関係を大事にできる人。そして互いの話に耳を傾けあえる、コミュニケーションが取れる人たちを大事にすることで、活力のあるコミュニティを一緒に作っていけることでしょう。

コミュニティ運営者・サポート担当者は裏方であることを忘れない

コミュニティの運営者、サポート担当者の立場になると、沢山の人達と繋がりができ、情報が集まってきます。場合によっては、参加者からスターのような扱いを受ける場合もあるかもしれません。

そんな場面で、運営者・サポート担当者がスターのように振る舞うことは、コミュニティが崩壊する第一歩です。気を引き締めて、「自分は裏方である」と意識し直し、動かなければなりません。

コミュニティ運営者、サポート担当者は、ちやほやされるべき存在ではありません。 コミュニティの主役は、参加者一人一人であり、その場にいる全員、そして「場」そのものが主役なのです。

中国の故事に 「鼓腹撃壌」(鼓腹撃壌) という言葉があります。

古代中国の帝、堯(ぎょう)は、自分をちやほやする声を聴くとかえって心配になり、逆に「帝がいなくても平和に暮らしていける」という老人の歌を聞いて、ようやくホッとしたといいます。

コミュニティの運営者・サポート担当者は、「自分がいなくても、コミュニティの参加者が自由に、楽しく活動でき、場そのものが広がっていく」ことを、誰よりも喜ぶべきでしょう。

人脈や情報を独占しない

上記と絡みますが、コミュニティの運営者・サポート担当者は、さまざまな情報・人脈の中心点となることが多くなります。そんなときに、情報や人脈を独占せずに、積極的にコミュニティ参加者への還元を行うことが大事です。

別な言葉で言うと「○○さんがいないと、話が進まない」ではなく「○○さんがいなくでも、コミュニティが回る」状態が、コミュニティがうまく回っている状態である、とも言い換えることができます。

特に、企業の担当者としてコミュニティの担当を行う場合、企業のリソース(お金、時間)を使って人々と交流することが多くなります。そこで得られた人脈・情報は、企業、そしてコミュニティの参加者へ還元すべきです。

ベンチャー企業や外資系企業で、自分が所属する企業のお金を使ってパーティを開き人脈を構築し、その人脈や情報を持ったまま退職して、別な企業に人脈・情報ごと持っていくケースを何回か見たことがあります。個人的には、人と人とのつながりが大事な「コミュニティ」という場で、その行動はどうだろう、と思うことがあります。

コミュニティで得られた人脈や情報は、積極的にコミュニティという場に還元すべきでしょう。

以上、自分が日ごろ気をつけていることを中心に記述しました。

コミュニティ運営者・サポート担当者のみなさんが、円滑に、活力あるコミュニティを形作っていけるよう、応援しています。