コミュニティデザインのプランと実践 その3 コミュニティデザインの実行

この原稿は「DevRel Advent Calendar 2017」の17日目の記事です。

前項では、コミュニティデザインの最初の計画について記述しました。 今回は、計画に基づく実行フェーズについて記述します。

  • コミュニティデザインの実行
    • コミュニティサポートのための体制づくり
    • コミュニティサポートのサイクル
    • 6つのサイクル
    • 小さなサイクルから大きなサイクルへ
    • KPIの設定

コミュニティデザインの実行

先だって、「コミュニティの形」を考える過程を記述しました。どのようなコミュニティを形作っていくか、具体的に見えてきたら、次は実行フェーズとなります。

コミュニティサポートのための体制づくり

企業の立場からコミュニティを運営する・コミュニティをサポートする場合、内部に協力者・理解者を作っておきましょう。

コミュニティ活動・コミュニティサポートに対して理解がない企業の場合、業務時間を利用してコミュニティ活動を示すことに難色を示す企業もあるかもしれません。状況によっては、一人で活動せざるをえないこともあるでしょう。

それでも、内部に理解者、協力者を作っておくことは大事です。主に以下の理由によります。

  • コミュニティサポートに行き詰まったときに助けとなる

コミュニティは人が集まって形作られるものです。人と人とのコミュニケーションは、リアルなものです。そこには、必ず相性が存在します。 コミュニティのサポート担当者が一人しかいない場合、人間関係に悩むことも出てくることでしょう。そんなときに、窓口を変えることができる仲間がいることは、心理的な助けとなります。

  • 仕事としてコミュニティサポートを実行する際の味方となる

もしコミュニティの運営・サポートが認められたとき、仲間がいるかいないかは、大きな違いとなります。一人より二人、二人より三人、仲間がいたほうが、作業分担ができ、一人だけのときよりも2倍、4倍、6倍とできることが広がります。

コミュニティサポートの6つのサイクル

体制ができたら、6つのサイクルでコミュニティを盛り上げていきましょう。

  • 見つける
  • 接する
  • 共有する
  • ともにつくる
  • 広げる
  • 続ける

コミュニティを盛り上げる6つのプロセス

最初の「見つける」は、仲間を「見つける」ことを指します。事前の準備で、誰と、どんなコミュニティを形作るかを考えました。実際に、一緒にコミュニティを作っていきたい人たちに声をかけ、仲間を見つけることが最初のステップとなります。

次に「接する」。接し方にはいろいろな形があります。

  • 挨拶を交わす
  • 意見交換をする
  • 対応する

一番軽い接触は「挨拶」でしょう。とくに話題がなくても、挨拶なら気軽に交わすことができます。人間関係の基本は、挨拶と言われるとおり、すべてのコミュニケーションの基本ですね。

次に、意見交換をする。お互いが何を考えているか、どのような思いを持っているかを伝え合います。コミュニティのキーワードに対して、思い入れが強い人は、その発信力も強いことでしょう。

一方で、コミュニティではどうしても起こってしまう「言葉のすれ違い」という問題があります。このすれ違いに「対応する」のが、スムーズなコミュニティ運営にとって、とても重要な事です。

そして、「共有する」。共有にも、いろいろな形があります。

  • 情報の共有
  • 場所の共有
  • 時間の共有

オンラインで発言しあうことは、視点を変えると 「お互いの情報を共有しあっている」 状態です。情報を共有することは、相互理解につながります。

さらに、実際に 「会ってみる」。あうことは、つまり 「お互いの存在場所を共有している」 状態です。場所を共有すると、互いの存在をより強く意識することができます。

情報を交わし合い、場所を共有すると、お互いの時間が重なっていきます。すなわち 「時間」 の共有です。時間を共有することで、コミュニティの結びつきはより強くなっていきます。

お互いの理解が進み、結びつきが深まると、次のステップ 「ともにつくる」 に進むことができます。 「つくるもの」 は、いろいろな形があります。勉強会かも知れません。飲み会の企画かもしれません。あるいは、大規模な創作活動かもしれません。いずれにせよ、「ともにつくる」 ことで、コミュニティという目に見えない人々の集合は、その 「形」 を表します。 「つくり、あらわす」 ことで、互いの絆はより深まります。

そして、コミュニティを 「広げる」。もし、何かを 「つくる」 行為が楽しく、有意義なものだったら、それを人に伝えたくなるのは自然なことです。自分の活動や仲間を人に伝え、さらに仲間を広げていく。仲間を広げることは、コミュニティの活性化において、欠かせない要素の一つです。

最後に 「続ける」。続けることは、実は一番大変です。一時的な情熱で何かを成し遂げることは、案外できるものですが、継続にはより多くの情熱やパワーが必要になります。逆に言うと、ある程度の期間において 「続ける」 ことができると、そのコミュニティはますます豊かに、広がりを持つことでしょう。

多かれ少なかれ、コミュニティは上記のプロセスを繰り返すことで、盛り上がり、より実りが多いものになるのだと考えています。コミュニティの運営に悩んでいる場合、上記のプロセスをどのように実現するか、実際に当てはめていくと、解決策が見えてくるかもしれません。

小さなサイクルから大きなサイクルへ

上記の6つのステップを、どのように実行していくかを考え、実行していきます。最初は大きなイベントである必要はありません。会議室や喫茶店、あるいは居酒屋に集まって、ワイワイと語り合うだけでも、コミュニティの盛り上げにとっては大事な活動です。声が届く範囲の人と、6つのサイクルを実行していき、徐々に仲間を増やしていきましょう。人を引き寄せるのは、やはり「人」です。楽しそうにコミュニティ活動を行っている人の周りには、きっとさまざまな人が自然に集まってくることでしょう。

KPIの設定

企業活動としてコミュニティ運営・コミュニティサポートを行っていくと、KPIを求められる場面があります。これは、具体的な「正解」と言うものがない世界です。ある企業は、インターネット上の情報の露出度合いをKPIにしていると言っていました。コミュニティ活動に触れるブログ記事が何本公開されたか、ツイートが何個発言されたか、などの数字をKPIにするものです。

あるコミュニティは、イベントの参加者の人数を。 あるコミュニティは、ユーザーグループのグループ数を。 あるコミュニティは、「具体的なKPIは設定していない」と言っていました。確かに効果はある、ポジティブなフィードバックはある、しかし具体的な筋目標は建てられないとのことで、KPIを一時棚置きして、まずはコミュニティ自体を盛り上げ、参加者を増やすことを目標としたそうです。

このように、KPIの設定方法はいくつもあるので、自分の立ち位置・環境に合わせて考えるのが良いでしょう。

まずは動いてみる

先述しましたが、コミュニティ活動・コミュニティサポートに対して理解がない企業の場合、業務時間を利用してコミュニティ活動を示すことに難色を示す企業もあるかもしれません。状況によっては、一人で活動せざるをえないこともあるでしょう。

そのような場合は、「まず、行動する」ことで道が開けることがあります。

筆者も、最初は企業として施策として活動したわけではなく、個人的に知人やクライアント、代理店・制作会社などと私的に集まり勉強会を開いておりました。やがてその活動が、所属する企業に認知されて、事業の施策の一環として、コミュニティサポートを正式に仕事して行うようになったという経緯があります。

仕事として動きづらい場合は、まず個人的に動いてみるのも大事なことだと考えています。