SNSの繋がりは、経済合理性では説明できない

「モバツイ」の開発で著名な、えふしんさんこと藤川真一さんの著書、「100万人から教わったウェブサービスの極意 ~「モバツイ」開発1268日の知恵と視点」 を読了。

いろいろと興味深い内容だったが、中でも思わず肯いてしまった部分をご紹介します。

100万人から教わったウェブサービスの極意 ~「モバツイ」開発1268日の知恵と視点
100万人から教わったウェブサービスの極意 ~「モバツイ」開発1268日の知恵と視点

本書の第6章に、以下のような段落がありました。少々長いですが、そのまま抜き出します。

たとえば、徹夜で並んでiPhoneを手に入れたことをツイッターで実況するのはジマンです。長蛇の列に並ぶ人たちがお祭りのように騒ぐのは、他の人が得られないものを徹夜してまで手にしたというジマンの共有だと思います。その後は疲れ果てて寝てしまうわけですから、人間は、生産性や実利に基づく合理性とはまったく別の部分で精神的満足を満たすことにお金や時間を費やす、不合理な生き物ということが言えるでしょう。

SNS上にあるビジネスは、この不合理な部分を徹底的に利用しているものが成功しています。ソーシャルゲームでゲームの進行をスムーズにするアイテムを、お金を出して買ってしまうことも、「お金で時間を買う」という合理性に基づいているように見えて、それでは、そもそもなぜそのゲームを続けるのかと問われれば、そこには経済合理性などまったく希薄です。しかし、今では、ネット上の関係性の維持に必要なコストとしてソーシャルゲームにお金を払うという行為は認知されています。

(第6章 「どうする!? プラットフォームとの距離感」から)

SNSやコミュニティでの人と人との繋がり、いわゆる「ソーシャルグラフ」は、通常、個人的な交友関係によって形成されます。

ソーシャルグラフ上では、自分の友人、知人、家族に 「かまってもらう」 「注目してもらう」 ことが、喜び・楽しみにつながることは、SNSを利用している人なら誰でも身に覚えがあると思います。

この「かまってもらいたい」気持ちは、マズローの欲求段階説でいう「所属への欲求」「承認への欲求」で考えるのが、もっとも腹に落ちます。

ビジネスを目的にSNSを通じて「コミュニティ」を作ろうとしても、なかなかうまく行かないのは、「SNS」の特性と「経済合理性」が、必ずしもマッチしない事が多いためだろう、と考えるのです。

ちなみに、本書は6章立てになっていて

  • 1章が「ウェブ2.0」時代の振り返りと自己紹介
  • 2-3章がTwitter勃興時の話と、モバイルベースに「モバツイ」を開発した経緯
  • 4-5章がソーシャル・ネットワークへの思いと、ウェブサービスの運営、成長、マネタイズについて
  • 6章がプラットフォームの説明と、戦略について

という構成になっています。

4-5章は、ウェブサービスとソーシャル、そしてビジネスを考える上で、いろいろと参考になる箇所が多いので、興味を持たれた方は一読をおすすめします。