コミュニティデザインのプランと実践 その1 コミュニティとは何か

この原稿は「DevRel Advent Calendar 2017」の15日目の記事です。

数回に分けて、「コミュニティデザイン」のプランと実践、と題して、ビジネスコミュニティ・コミュニティマーケティングに関する記事を書いていきます。

自分は数年に渡って、属する企業のサービス・プロダクトのユーザーコミュニティの立ち上げや支援に携わってきました。 この数年の仕事を棚卸しする意味で、これまで考えたことや、経験したことを体系的にまとめておこうと考えました。

この原稿が目指すところ

ビジネスプロダクト・もしくはサービスを展開している企業のコミュニティ担当者への知識・情報共有。 コミュニティマーケティングの手法を使って、利用者・導入者と共にユーザーコミュニティを形作りたいと考えている方に、参考になれば幸いです。

この原稿は、「自社プロダクト・サービスを利用するユーザーコミュニティを支え、サポートする企業担当者」という目線からの記述となります。 あらかじめご了承ください。

コミュニティデザインについて語る前に

「コミュニティデザイン」というのは、自分の造語です。 コミュニティデザインについて語る前に、まず最初に、「コミュニティとは何か」について考える必要があります。

コミュニティとは

コミュニティとは一体なんでしょうか。gooが提供する「デジタル大辞泉」では以下のように説明されています。

居住地域を同じくし、利害をともにする共同社会。町村・都市・地方など、生産・自治・風俗・習慣などで深い結びつきをもつ共同体。地域社会。

説明のとおり、コミュニティという言葉は、地域とその利害関係に強く紐づくものでした。「コミュニティ」に関する書籍を探すと、地域社会を題材にした出版物が多く見つかります。

一方で「テーマコミュニティ」という言葉が存在します。これは特定の興味・課題・問題などを中心に形成されたコミュニティを指します。

ネット上には共通の興味・課題を中心に形作られる「テーマコミュニティ」が多数存在します。あちこちで毎日のように勉強会やミートアップが企画され、盛り上がりを見せていることは皆さんよくご存知でしょう。

インターネットの普及によって、地理的要因を飛び越えて、同じ興味・関心・利害を共有できる人同士が集まることは、とても容易になりました。インターネット、あるいはパソコン通信の時代から、ネット上では勉強会や共同プロジェクトをテーマとしたコミュニティが盛り上がりを見せてきました。

オンライン上には、実際に会うことはなくても、同じ興味・関心を持ち、共通の目的を持つ者同士、強い結びつきを持ったコミュニティがたくさん存在します。地理的な要因、そして時間を超えて繋がり合えるネットは、コミュニティととても相性が良いのです。

ネット上で無数に存在するコミュニティや勉強会を、デジタル大辞泉の説明に準じてあえて説明するならば、

「地理的な制約を超えて、同じ興味・関心・利害を共にし、情報の共有・問題の解決などを行う共同体」

と言うことができるでしょう。

コミュニティデザインとは

上の段落では、「同じ興味・関心・利害をともにし、情報の共有・問題の解決などを行う共同体」がコミュニティである、としました。

それでは、興味・関心が同じ人達が集まれば、コミュニティは自然に盛り上がり、発展していくでしょうか。

みなさんも経験があるかと思いますが、同じ興味・関心を持つ人が集まると、飲み会も盛り上がるし、大変楽しい会話ができます。しかし、なにもしないと、一過性の「オフ会」で終わってしまい、いつの間にか互いの連絡も疎遠になることはよくあります。

つまり、単に「集まる」だけのコミュニティでは、一時的に盛り上がることはあっても、継続的に発展してくのは難しいものがあるのです。

同じ興味を持つ者同士が継続的に連絡を取り合い、必要に応じて意見や情報を交換できる状態を保ちつづけることによって、コミュニティの熱量は失われず、新たな価値や情報を生み出すことができます。コミュニティを継続するためには、互いのつながりを切らずに保ちつづけるためのプランを考え、実行することが必要となることでしょう。

自分は、コミュニティに活力を保ちつづけるためのプランを考えることを「コミュニティデザイン」と称しています。

コミュニティデザインとは、人と人とのつながりを一過性にせず、継続的に連絡が取り合える状態に保るための計画・設計図であると言い換えても良いでしょう。

立ち位置によっては「コミュニティマーケティングのマーケティングプラン」という言葉のほうがしっくり来る方もいるでしょうし、「コミュニティサポートの具体案」と言い換えることもできるでしょう。適宜読み替えて解釈ください。

コミュニティデザインの流れ

以下、実際に自分が思考・行動してきたことを順序立ててまとめてみました。

  • コミュニティの「形」を考える

    • プロダクト・サービスのメリットを整理する
    • 「誰と」コミュニティを形作るかを考える
    • コミュニティを通じて、参加者が得るメリットを整理する
    • コミュニティの理想の状態を具体的に想定する
    • 理想的な状態を作るための具体的な方法を考える
  • コミュニティデザインの実行

    • コミュニティサポートのための体制づくり
    • コミュニティサポートのサイクル
    • 6つのサイクル
    • 小さなサイクルから大きなサイクルへ
    • KPIの設定
  • コミュニティデザインにおける注意点

明日以降は、上記の項目に従って記述していきます。