Movable Typeが培ってきたコミュニティと、CMSとしてのマーケティング展望(WebSig24/7 MT4分科会第3回勉強会レポート その3)

WebSig24/7 MT4分科会第3回勉強会レポートの第3回目は、MTの持つコミュニティパワーとCMSとしてのマーケティングのお話です。

■□ 「MTコミュニティ」の構成層

MTは、2009年時点で

・日本国内のトップシェアを持つCMS
・ブログシステムとして最も認知されているブランドのひとつ

であります。

今でこそ「CMSシステムとしてのMT」の認知度が高まっていますが、元をただせば純然たるブログシステムから発達してきたシステムです。

図をご覧ください。

MT_share1
これは、MTのユーザー層分布を概念化したものです。

ピラミッドの一番下は、いわゆる「ブロガー」としてのMTユーザー層。
もっとも利用者層が多いと思われる層です。

真ん中は「MTをCMSとして利用するユーザー層」CMSとしてのMTユーザー層になります。
最上位は、MTをごりごりにカスタマイズしている、もしくはエンタープライズ版を使っている、あるいはMTOSへコミットしている「MTの技術的ヘビーユーザー層」となります。

CMSとしてのMTのシェアの高さは

「ブログとしてのMTの利用者」からなるものであり「ブログシステムとしての知識をCMSに転用」した上でのシェアの高さにつながっていると思われます。

これらのトータルが、そのままMTのコミュニティ層と言えるでしょう。

(ピラミッドは単純にユーザー層のボリュームを視覚的に表すための概念図であり、上下関係とはまったく関係がありません。技術的な「濃さ」の上下と解釈ください)

■□ CMSとしてのMTコミュニティはウェブ制作会社・システム会社が中心

今回のWebSig24/7のイベントに参加したユーザー層は、「CMSとしてのMTを企業で利用している」ユーザーが7割かそれ以上だったと思われます。純粋な「ブロガー」としてのMTユーザーも参加されていましたが、中心層はやはりウェブ制作会社でした。

 

MT_share2

上記の図は、SAKKが主体となって行っている各層へのマーケティング展開の略図です。
(誤りなどあったらご容赦ください)

SAKK自体、下はブログユーザーを対象としたブロガー・ブロゴスフィアを対象として。
CMSユーザー対象としてはセミナーやハッカソンを開くなどして、各層へのマーケティング活動、プロモーション活動を行っています。

それに対して、今回の「WebSig24/7 MT4分科会」は、そうした開発元主導ではない、自主的な勉強会、コミュニティ活動にあたります。

このように利用者が独自に企画して勉強会を開くという事実は、MTコミュニティの活発さを表すものであり、コミュニティの強さを表していると言ってよいでしょう。以前は商用CMS、今はオープンソースCMSに携わる立場の僕から見ると、うらやましい限りの盛り上がりです。MTにとっての資産は、こうした「ユーザーコミュニティ」にあることは間違いありません。

■□ MTの現在のシェアの意味、今後のマーケティング戦略

さて、ここで目を「CMSとしてのMTのシェア」に移してみましょう。

図は、インターネット白書(インプレス)が調査した、日本国内のCMSのシェアです。
日本国内のCMSとしてはMTが3年連続トップを占めており、2007年時点では、その占有率は27%強となっています。

(画像は「Web担当者フォーラムより。元記事へリンクを張っています)

インターネット白書 CMSシェア


この「27%」という数字は、重要な意味を持ちます。

マーケティングの世界で言う「ランチェスター戦略」の「市場影響シェア」を獲得していることを意味するからです。

http://www.atmarkit.co.jp/aig/04biz/koopman.html
http://d.hatena.ne.jp/netreview/20070516

つまり、現在のMTは、日本国内でCMS市場に非常に大きな影響を与える存在となっているわけです。

もし僕がMTの営業・マーケティング担当者だったら、次の目標は当然「トップシェアを獲得、相対的安定値」にあたる41.7%の占有に向かうための行動を行うでしょう。アットマークITの記事の言葉を借りれば「3者以上の市場では圧倒的に優位な地位が確保でき、安定した事業を展開できる」位置にMTを持っていくことができるのです。

この「41.7%強」というのは、携帯電話で言えばNTTドコモ、ビールで言えばアサヒビールのようなもので、非常に安定的な事業展開が可能となります。

2008年度は、ややシェアが落ちて21.7%になっていますが、母集団の大きさを考えると、誤差範囲といえるレベルで、引き続き40%強を狙える位置にあることは間違いありません。

■□ MTユーザー層の母集団が少なくなっている気がする

さて、ここで問題は、「CMSとしてのMTユーザー」を形成する上で、非常に重要な位置づけにある「ブログシステムとしてのMTユーザー」の数が減ってきているのではないか、ということです。

以前の記事に書いたとおり、2009年時点では、ブログシステムはWordPressのほうに勢いがあるように思えます。また、ブログではなく、マイクロブロギング(Twitterなど)の利用者も増加の一途をたどっています。

MT_share3

図は、MTを利用するブロガーの離脱の概念図です。ブロガーとしてのMTユーザーが減少しているとすれば、今後「CMSとしてのMTのマーケティング戦略」に影響は小さくありません。

つまり、CMS層の母体となる「MTブロガー層」が少なくなっているため、将来的に「MTをCMSとして使う層は現状~縮小する可能性もある」ということです。

では、「ブログとしてのMTを前面に出したプロモーション、マーケティング」をした場合、どうなるでしょうか。確かに「MTを利用したブロガー」は再び増加するかもしれませんが、今度は「CMSとしてのMT」のプロモーションが弱くなり、他社にシェアを奪われる可能性があります。

 

■□ コンペティターの多いCMS市場、高機能を求めるユーザー群

ウェブCMSとしてみた場合でも、コンペティターは枚挙に暇がありません。

WordPressはもちろん、アメリカで絶大な支持を誇るDrupal、Joomla。商用CMSからオープンソースに舵を切ったConcrete5。ウェブCMSとしてのカスタマイズ性、優れたユーザーインターフェースを持つmodx。エンタープライズCMSとして定評あるTypo3、ミツエーリンクスがバックアップするezPublish、国産CMSのSOY CMS、WebRelease、CMS Designer、a-blog CMSなどなど。 ちょっと考えただけで、強力なライバルがたくさん存在します。

そして、上記の「インターネット白書」の統計を良く見ると、高機能ないわゆる「商用CMS」「エンタープライズ型のCMS」がややシェアを伸ばしています。これは、エンドユーザーがCMSとしての性能を求めており、見る目が厳しくなってきていることを意味します。

もともとの出自がブログであるMTは、本格的な商用CMSと比べると、機能的に若干見劣る箇所があります。今後、MTはこうした高機能なCMS群と戦わなければならないのです。

トップシェアを持つMTは、ブログシステムとしてもCMSとしても、どうしてもターゲットになってしまうといえるでしょう。そして、CMS市場とブログ市場、どちらを主戦場に選んでも、どちらかが手薄になるという、二律背反状態に陥る可能性があるのです。

■□ シェア確保のためにとりうる選択肢

では、MTはブログ、CMS、どちらの市場をとりに行くべきでしょうか。個人的には、すでにCMSとして非常に高いシェアをとっており、「パッケージのライセンス料」という売り上げを得られる以上、CMSとしてシェアを取りに行くべきだと思っています。

それでは、CMS市場のシェアを40%強まで持っていくため、考えられるシナリオはどのようなものでしょう。

ない知恵を絞っていくつか想定してみました。

(1)・MTはCMSに徹し、ブロガーへは別ブランド展開(たとえばTypePadをオープンソース化)する

MTを完全に「ウェブCMS」として特化し、機能的にもマーケティング的にもCMSを前面に打ち出してs製品特性のマッピングを行い、ウェブ制作会社やSierを中心としたマーケティング展開を行うこと。個人的に、MTはウェブCMSとしての機能強化を志向せざるを得ないと思うので、こういったシナリオが一番フィットする気がします。

個人ブロガーは、もっと簡易なシステムでブログに慣れてもらい、より複雑な構築を行いたい場合、スムーズに「CMSとしてのMT」に移行してもらう戦略です。

(2)・MTとMTOSをそれぞれCMS、ブログシステムとして展開する

そもそもWordPressに移行する理由のひとつに「MTは有償だから」という理由があると思います。実際には、MTは個人ライセンスは無償ですし、MTOSも存在するのですが、ユーザーの印象は「MT=有償」というイメージが残っているようです。

これを覆すために、あくまで「MTブランド」「ブログベースのアーキテクチャ」で、ブログ、CMSの両市場ともにとりに行く戦略。あるいは「MTは個人は無料」と徹底的に訴える作戦。いずれにせよ、MTブランドを全面展開する戦略です。

この案のデメリット、つまり考えられる脅威は

  • 一時的に、あるいは中期的に「有償ライセンス」のMTの売り上げが減ること
  • ブログベースでのブラッシュアップになるため「ウェブCMSとしての使い勝手、機能強化」を追いづらいこと

などがありえます。


(3)・MTはあくまでブログのコアシステム。CMSとしてのブラッシュアップはMT+αでいく

これは現状に一番近い形で、MTはブログを中心としたコアシステムとして開発を続け、CMSとしての機能アップは、サードパーティやコミュニティによる外部開発、プラグインに頼る戦略です。

現在、MTのソリューション企業は数多いため、こうしたフォーメーションによるマーケティングは有効だと思われますが、問題は「サードパーティは、MT以外の選択肢も存在する」ことです。また、シェア獲得、製品戦略が外部の影響に左右されるため、自社主導のマーケティング展開が取りづらい側面も出てくるでしょう。

ここまでは製品戦略の範疇ですが、営業展開にもいろいろなバリエーションが考えられます。(こちらについては割愛します)

以上、例によって無責任な床屋談義をいろいろと行ってしまいました。

CMSに対する市場需要、CMSの市場規模はまだ数年は広がると思われます。そんな状況下でのMTの製品戦略、マーケティング戦略は、外部から見てとても面白く感じます。将来的に、MBAの講義の題材にもなりえるそうなビジネスケースのように思えます。

以上、3回にわたって長々と続けた「WebSig24/7 MT4分科会」の感想はこれでおしまいです。お付き合いいただき誠にありがとうございました。を書いてきましたが、次回はもう少し「CMSとしてのMTの機能強化」について記述したいと思います。

※5/23 内容を若干追記しました。