Typo3技術者との会話、日欧のCMS観の違い―OSC2009TSの感想・3

「オープンソースカンファレンス2009Tokyo/Spring」(以下、OSC2009TS)の感想その3。最後は、大型CMS「Typo3」の技術者との会話から感じた、日欧のCMS感の違いについて記述します。

MODxが展示していたブースと同部屋には、NetCommonsやGeeklog、Joomla、OpnPNEなど、CMS・SNSエンジンに属するユーザー会が一堂に集まっておりました。その中には、近年日本での活動を活性化している「Typo3」の皆さんもおりました。

Typo3は、日本国内での普及活動に関わっているスタイルチューンさんと、スイスの主要なTypo3ディベロッパー、スノーフレーク社のトーマスさん、他有志での展示を行っており、国際色を感じるブースでした。スノーフレーク社はスイスの会社で、Typo3の導入や構築、プラグインの開発などを行っているようです。さしずめ、日本でいうと、Movable Typeに対するスカイアークシステムさんやアルファサードさんのような立ち位置でしょうか。

情報交換をしている中で、トーマスさんとCMSに関する激論(?)を交わす機会がありました。

以下、彼によると、Typo3の特色は

  • Typo3は、欧州では非常に評価を受けているCMSだ。シェアは50%に達する。(注:最後に追記あり)
  • 承認は何段階でも設定できる。
  • リビジョン管理があり、サイトのバージョン管理がしっかりしている
  • テンプレートパーツの組み換えがしやすい
  • PHP系のCMSとしては大型のシステムに入る
  • 同じ大型CMSとしてはezPublishがあるが、Typo3の方が導入実績が多い

などを長所として挙げておりました。

日本では、Movable TypeがCMSとして非常に人気が高く、企業の導入現場に良く使われていること、また、最近はWordPressがCMSとしての人気を博しつつあることを話すと、非常に驚いて、

  • →何故、MTとWPがCMSとして使われるか分からない。MTもWPもブログソフトウェアである。CMSとしては、もっと選択肢があるはずだ。

とおっしゃる。彼の中では、おそらく「ブログソフトウェア」と「企業向けのCMS」はまったく違うものだ、という認識があるようで、どうやらヨーロッパのCMS関連企業はみな同様の発想をしているようです。

以下、僕とトーマスのやりとり:


「MTには静的ファイル生成の機能があり、そこがアドバンスの一つである。(注:MODxにも静的ファイル生成機能はあります)

  • →Typo3にもキャッシュ機能は存在する。静的な対応はできる、何か問題があるだろうか?

「確かにキャッシュファイルでアクセス負荷は軽減されるが、それだけではなく、リアルなhtmlによるサイト構成を望むクライアントが多いのだ」

  • →理解できない。何故日本の企業は動的CMSを避ける傾向があるのだろうか?

「日本の企業は、セキュリティ上の観点から、動的生成型のCMSを嫌う企業も多い。DBの負荷監視、PHPなどに起因するセキュリティ的な脆弱性の発生に対する監視、その他、一般的に管理が煩雑になるからだ」

  • →なるほど、日本企業とベンダーの傾向の一つということで理解する。

と、ある程度納得したようでした。

ヨーロッパではあまり静的html生成型のCMSに対する要望が強くなく、動的CMSが中心なんですね。

以前、「ヨーロッパのCMSは動的生成型が中心で、静的html生成型のCMSはむしろ少ない」と聞いたことがあったのですが、今回改めて実感した次第です。

ところで、Typo3は良いソフトでした。いわゆる「エンタープライズCMS」というやつで、商用のCMSに引けをとらない機能を持っていると感じました。

そういえば、テスト環境として非常に重宝している「Xampp」も、元々はドイツ語環境で育ったプロジェクトですね。

あえて言うと、ドイツ語環境で発達してきたシステムなので(英語のリソースはあるとはいえ)今後の技術情報の翻訳スピードがどうかな、と言う点と、あまりに大きいシステムなので、仮想化技術を利用した、日本の共用サーバーやお手ごろサーバーで動かすにはちょっと重いんじゃないかなー、というのが懸念点ではありますが。企業向けのソリューションシステムとしてはかなり良い線行っていると思いました。

というわけで、OSC2009の感想はおしまいです。

 

(にっく注:シェアおよび導入実績については、やや正確さを欠くと見ています。Typo3はドイツ製のCMSであり、スイスもドイツ語圏の国であることから、スイスの会社であるスノーフレーク社から見るとシェアが高く見えるのだと思われる。

参考までに、Google Insightによるキーワード認知を調べてみた。
以下が、スイス国内における主要CMSの検索キーワード発生率

 CMS_switzerland

以下が、ドイツにおける、主要CMSの検索キーワード発生率

 
CMS_German

以下が、イギリスにおける、主要CMSの検索キーワード発生率


CMS_UK

以下が、フランスにおける、主要CMSの検索キーワード発生率


CMS_France

Google Insightの結果がシェアと直結しているとはもちろん言えませんが、ドイツ語圏でのTypo3の認知度は非常に高いと見て間違いない。ヨーロッパ全体では、「突出している」とまでは言えないが、認知度は相応に高いと見てよさそうです。以上、長い注釈終わり)