「佐藤可士和の超整理術」と「ルールを突き抜ける提案」の話
■ロジカルな整理術、ロジカルなデザイン
佐藤可士和さんの著作「佐藤可士和の超整理術」を読みました。
佐藤可士和の超整理術
佐藤可士和さんといえば「Docomo N702iD」や麒麟麦酒の「極生」などのデザインで著名です。
大ヒット作「Docomo N702iD」
極生。テレビCMは放映せず、店頭と街頭プロモーション、パッケージデザインだけで記録的な売り上げを作ったそうな。
アートディレクターではあるのですが、その仕事ぶりは単なるデザインを超えて「ビジネスデザイン」や「アイデンティティーデザイン」とも言える領域までこなしています。
特に、単なる「身の回りの整理整頓」ではなく、身の回りに存在する全ての事象を
「空間」の整理
「情報」の整理
「思考」の整理
と3レイヤーに分けて、物の整理→考え方の整理にまでつなげるくだりは、きわめて論理的。どこにもあいまいさがなく、小気味良い快感を感じます。
つい先日、ウェブデザイナーのcremaさんと「ロジカルなデザインっていいよね」という話をしたばかりだったので、いっそう文章の一つ一つが頭に入り込んできました。
■突き詰めて考え、「ルールを破る」決断にいたるエネルギー
中でも面白かったのが、「国立新美術館」のロゴマークを考えたときのエピソード。
国立新美術館のロゴマークコンペにあたり、クライアント側から提示されたRFPには「英語の名称である『National Art Center,Tokyo』の頭文字4つをとって『NACT』をモチーフしてください」というルールが提示されたそうです。
(RFPは「リクエスト・フォー・プロポーザル」の略。「この条件で提案してください」という、ビジネス上の事前ルールの取り決めのこと)
で、佐藤さんは考えに考えて
「国立新美術館の『新しさ』を表現するには、漢字の『新』以外に考えられない」
と判断、それが見事に採用されたのだそうです。
これがそのテーマ。漢字の「新」をモチーフにしています。
このエピソード、同じくデザイン会の巨匠、松永真さんの「ベネッセのコーポレートマーク」を彷彿とさせます。
松永さんがベネッセのコーポレートマークを提案するときに、「ひとつのグラフィックだけではベネッセのメッセージを伝えきれない」として、提案時に、本来ひとつだけの提案であるはずのCIデザインを10近く準備して提案したそうです。
その時点でそもそもルールを逸脱しているのですが、当時のベネッセの社長が「全部良い。ひとつに絞れない。全てをベネッセのコーポレートマークとして採用したい」と、全種類を採用してしまった話です。
本来は、RFPを逸脱した時点でアウトなんでしょうが、考えに考えに考え抜いた提案の「迫力」が、クライアントを説き伏せてしまった様子が窺い知れます。
この世界には、意図的にルールを破ってみせるパフォーマンスというのがあります。魂の入っていないパンクミュージックとか、ビジネス上作られた「反抗者」イメージのアイドルとか、そういう「作り物の逸脱者」とでも言うべき存在。
そんな、「作り物」には絶対出せない
「考え抜いた末に、最善の方法としてルールを破る」
エネルギーって、どのぐらいの精神力が必要なのでしょうか。
こういう、思考を極限まで整理した、研ぎ澄まされた状態で「感性」と「論理」を結びつける瞬間って、どんな感覚なのでしょうか。
できるなら、そんな極みの世界に触れてみたいな、と思ったのでありました。

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