2009年6月24日 20:00

Melodyの発表とMTOSとシックスアパートにおける製品マッピングの定義づけ

シックスアパートから、Movable Typeのフォーク版ブログとして「Melody」が発表されました。

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以前

MTはCMSとしてはっきりエッジを立たせ、ブロガー向けにはオープンソースの別ブランド立てたほうが良いのでは?

と、床屋談義レベルで書いたことがありますが、まさしくそのとおりの製品戦略をとってきた事になります。少々びっくり。

床屋談義その1
床屋談義その2
床屋談義その3


さて、「MTからフォークしたブログ向けオープンソース」と位置づけられているMelodyですが、そうなると当然気になるのは「MTOS」の存在です。

おそらく、シックスアパート社内では、既に製品のマッピングについて、ある程度位置づけと整理を行ったうえで、Melodyのリリースを行ったと思われます。

そもそもMTから派生したオープンソースとしては「MTOS」がオリジナルなわけで、この両者の住み分けはどうなるのでしょう。

以前に、シックスアパートの製品マッピングを考察したことがありましたが、例によって、無い知恵を絞って考えて見ました。

■シックスアパートの5周年時点では、MTのオープンソース版といえば「MTOS」だった

昨年(2008年)の12月、シックスアパートの5周年パーティが行われており、そこでは「Movable TypeもWordPressのようにオープンソース版がある」という社長の関さんの言葉があります。

ということは、少なくとも2008年の年末までは、MTOSこそがMTのオープンソース版であり、Melodyというのは今年(2009年)の前半以降に構想があがってきたプロジェクトであることは間違いないでしょう。

■位置づけがあいまいだった「MTOS」

さて、それではMTOSの状況はどうだったかというと、第三者から見るとあまり活発ではなかったように見えます。

MTOSは、パッケージ配布とは別に、ソースレベルで配布を行っております。これは誰でもSVNを利用すれば取得可能です

またバグトラッキングシステムもあり、その気になればどのような対応を行っているか確認ができます。

そしてもうひとつ、非常に大事なことなのですが、MTのお問い合わせフォームのプライバシーポリシーには

「ご報告いただくバグ情報は1)SAおよび2)SAが提供するバグトラッキングシステムにログイン可能な開発者によって利用されます。」

という文言が存在します。

このあたりの情報を統合して、また中を覗いて見ると

「MTOSって、MTのバグ修正が主目的のひとつにあるのではないか?」

「WordPressに対抗するために、無料でオープンソース版を提供しつつ、同時にバグ報告と有志によるバグ修正を行う生態系を目指す、二面作戦をとっているのではないか?」

という憶測に行き当たります。

確かにオープンソースならではの恩恵はユーザーにあるでしょう。しかし、プロジェクトの主目的のひとつが「バグ修正」だとすれば、その時点で開発者のモチベーションが下がることは想像に難くありません。

■オープンソースプロジェクトのモチベーション

オープンソースの開発者にとっては

  • 自分が考え付いたすばらしいアイディア
  • 他人が考えた、すばらしいが改善の余地があるアイディア
  • 総じて、先進的な機能、アイディア

を、プログラムという形で実体化し、そのアイディアを使ってもらったり、別な人間の手によってさらに洗練されたものに昇華されていくところに楽しさ(=参加するモチベーション)の一つがあると思います。

総じて

「知恵や英知が形になり、利用される喜び、互いに新たな気づきを得る喜び」

を見つけることが醍醐味のひとつだと思うので、ここにスポットライトがあたらないと、プロジェクトは自然に減退していくことが多いようです。

オープンソースのプロダクトは、その過程でバグや不完全な形になっているのがむしろ自然で、

「多少のバグや欠点はあるけれど、荒削りでもいいからきらりと光るアイディアが具現化したプログラム」

をリスクを承知で使うのが一般的です。

■「MT」ブランドがあるがゆえに、冒険がしづらかった「MTOS」?

一方、MTOSは「MTという商品ブランドがMTOSの不安定さによって傷つく」ことを回避するため、安定志向を目指しているように見受けられます。

結果として、「製品のアップデートと共に、MTOSにセキュリティパッチがあたる」という、不思議な状況になっています。

MTOSはGNU GPLのVer.2で配布されているため、その11章に基づいて無保証であってもよいのですが、MTOSは「Movable Typeの製品ブランドを傷つけないオープンソース」として、商用利用に比較的安心して使えるようになっています。

逆に「冒険が無いオープンソース」にもなってしまい、結果として「MTのデバッグバージョン」もしくは「MTの有償化に不満な人たちのための派生バージョン」としての意味合いが強くなってしまったのではないかと想像します。

■今後の製品の位置づけについて

今回、Melodyは「ブロガー向けのオープンソースブログシステム」として位置づけられています。

(Melodyのトップページに「Melody is an open source content management system for bloggers and publishers where its community of users and contributors is its most important feature」という文言が存在します。)

これによって、MTOSは

・MTの有償化に不満なユーザー
・MTをブログとして使ってきたブロガー

などに対応する義務から解放され、「積極的に新進機能を取り込み、実験の場として最先端の技術を楽しみ、発展させるラボ」として機能できるようになった、といえるでしょう。

また、Movable Typeは、「ブログソフト」から一歩進んだ「CMSソフト」として進化していくための準備が整ったともいえます。

つまり、3者の位置づけは

・Melody・・・
CMSへ脱皮していくことに不満を持ったユーザー、MTが難しいと感じていたユーザーの受け皿として「ブロガーのおもちゃ箱」として発展。名実共に「WordPress」の対抗プロダクト

・Movable Type・・・
より「CMS」としてエッジを立たせていき、ビジネスユースをカバーするためにブラッシュアップを重ねる商用プロダクト

・MTOS・・・
MTがCMSとして進化するための尖兵的位置づけのプロダクト。より、先進的な技術を試す「実験場」

というマッピングに集約されるのではないかと考えます。

逆に、MTOSが「MT」ブランドを引きずり、セーフティなオープンソースを目指すとすれば、いよいよMelodyとMTという2つのプロダクトから差異化ができなくなり、 MTOSの存在意義が問われることになるでしょう。状況によっては、MTに好意を寄せていた世界のコミュニティメンバーの心が、MTから離れかねません。

また、MTOSが機能的に進化するとすれば、MTよりも便利な機能が実装される可能性もあるわけで、この場合、MTの最大のコンペティターとしてMTOSが立ちはだかることも考えられます。

今後、まず大事なことは「MTOS」の戦略的な再定義と、MTOSの健全なプロジェクト運営、もしくは影響を最小限に留める撤退戦の遂行にあるような気がします。

いずれにせよ、僕は仕事上ではヘビーなMTユーザーなので、MTが健全に発展していくとよいなぁ・・・と思っております。