2008年12月 8日 20:00

Movable TypeはCMSとしてよりも、その製品マーケティングが突出している

すみません、タイトルは半分釣りです。MTはもちろんよくできたシステムです。テンプレートの代替機能が充実していて、コアに直接手を加えなくても済むところなど、他のオープンソース系CMSを触っていると素直に「すげー」と感嘆します。他のCMS、特にオープンソース系では、機能強化を行うときは当たり前のようにコアに手を入れることが多くて、この一点だけでもMTのすごさが感じられます。

ただ、それでもMTなみに機能を持ったブログ、CMSは数多あります。

米国でMT以上の利用率を誇るWordPressと比較すると、MTはWordPressを意識したバージョンアップを志向しているのが良く分かります。どちらかというと、WordPressのフォロワーのようにさえ見受けられることがあります。また、高機能CMSとして定評の高いjoomlaなどに比べると、コア部分の機能やプラグインの豊富さ、高機能さなども、MTがJoomlaよりもはるかに抜きんでているとは思えません。

では、MTのすごさはどこにあるのでしょうか。

その前に、今一度MTのリリースから振り返ってみます。

Movable Typeとは

Movable Typeとは、米シックスアパート社が開発・販売を行っているブログ構築システムです。日本では、シックスアパート社の日本法人がローカライズとサポートを行っています。

シックスアパートはターゲット市場に合わせて明確に製品ラインを区分しています。たくさんのエンドユーザーにブログを楽しんでもらうための製品としては「Typepad(タイプパッド)」が存在します。また、広告モデルによるブログとSNSを合わせたような新サービス「vox(ボックス)」というものもあります。

一方、MTは本格的なカスタマイズができるソフトとして展開されています。MTは従来、どちらかというと「ブログをカスタマイズして自分好みのデザインや仕様に変えたいユーザーのためのソフト」という印象でしたが、2005年~2006年頃から、明確に「法人向けのブログシステム構築パッケージ」へと製品のマッピングを変えたようです。実際に、MTの大型ソリューションとして「Enterprise版」が存在します。

また、MTは特に日本においてのシェアが高く、米法人も日本のマーケットや日本での活用をベースとした機能アップを意識しているようです。

2007年夏に、MT3.xから4.0へとバージョンアップ、管理画面や製品仕様等が大幅に変わりました。さらに2008年1月、4.1へとバージョンアップ。4.1ではマルチブログやカスタムフィールドなど、他のブログシステム・CMSシステムで存在する各種機能を標準仕様として、「ブログシステム → CMSシステム」へと大きく位置づけを変えました。

Movable Typeの国内シェア

MTの国内シェアは圧倒的なものがあります。図は、インプレスの「インターネット白書2007年版」における、CMSの国内シェアです。

CMSシェア

ご覧いただくと分かりますが、国内ではCMSシステムとしてMTを利用する企業が非常に多く、ついでオープンソースのパッケージ、そしてマイクロソフトや国内外の商用CMSベンダーが続きます。
これは、ブログが爆発的な広がりを見せたと同時に「ウェブサイトの管理にブログシステムが使える」と国内ベンダーが認知して、MTをソリューションアイテムとして使用したことが大きいと思われます。

 

MTのマーケティング活動に凄みを感じる

さて、再び冒頭に戻ります。MTのすごさはどこにあるのでしょうか。個人的には以下のようなものをあげることができると考えます。

(いずれも、よくご存知の方は「今さら何を言っているの・・・」の世界だと思います。)

  • 日本語情報の豊富さ
  • 日本法人設立とそのタイミング
  • マーケティング能力の高さ
  • コミュニティ育成の巧みさ

なんといっても、日本語情報の豊富さは圧倒的です。MTの技術情報や案件情報はインターネットで検索をかけると、すぐに見つかります。この「情報量の多さ」は、MTを使ってビジネスをする人、あるいはこれからMTを習得する人にとって、何よりも安心感を抱くことができます。

日本語情報の多さは、シックスアパートがサービスを始めたタイミングの絶妙さにも一因があります。シックスアパートは、ブログの普及が始まった2003年に、日本の現地法人を立ち上げました。

日本法人の設立と絡みますが、2003年~2004年にかけて、大手プロバイダー(ニフティ、NTTコミュニケーションズなど)がシックスアパート社のシステムを採用して、自前のブログサービスを始めました。日本国内で、シックスアパートが知名度を上げていったのは、この「著名プロバイダが提供するサービスのサポートを担当していた」ことが大きかったのではないでしょうか。このことにより、特にブログシステムとして、MTは一躍有名になっていきます。

(予断ですが、この設立は単に偶然か、あるいはブログマーケットを日本で展開しようとしていたネオテニーの思惑とぴったり時期が合ったのか、それとも大手プロバイダーのサポートのために現地法人をわざわざ立ち上げたのか、いろいろ個人的に妄想しています)

また、日本法人を設立したシックスアパートは、同時にMovable Typeの書籍をいち早く出版しています。サービスを立ち上げたと同時に、技術本が出るというのは通常では考えられません。おそらく、出版社とレベニューシェア的な契約があったのではないかと思います。

シックスアパートは制作費を出版社に払い、広告販促物としての効果を狙うと共に、国内でのMT技術者を育成してサービスの生態系を作る。出版社は初期の制作費用をシックスアパート社からもらう代わりに、ある程度の部数が印刷されたら印税という形で利益をシェアする・・・というモデルではないか、と考えています。

レベニューシェアが実際にあったかどうかは推測の域を出ませんが、いずれにせよ、この時点で積極的に情報の公開と広報活動を行ったのはかなりマーケティング的な発想といえます。普通のソフトウェア開発会社ではあまり想像が付かないでしょう。商用CMSで同様の動きがあったのはFatwireぐらいでしょう。

同時にプロネットという協力会社(販売代理店という側面もあり、協力会社によるネットワーク=コミュニティとも言える)をいち早く制度化しました。

また、これらプロネットやMTフォロワーに対して、その時々に、提案しやすい「バズワード」を提供しています。

mt4_cms

上記は、ちょうど2008年の上半期にシックスアパートのウェブサイト上で貼られていたバナーです。ここでは「ブログ→CMS」という、バズワードの転換が図られています。

MT3.xの頃、シックスアパート社は「ビジネスブログ」というキーワードを使用していました。これは、それまで個人のものと思われていた「ブログ」というものを、ビジネス上に有効活用しませんか、というマーケティング的な提案です。

こういったマーケティング活動を通して、意識的にコミュニティ=生態系を構築していることが分かります。このコミュニティというか、生態系の有様は、iモード立ち上げ時のNTTドコモと、コンテンツプロバイダーの関係を想起させます。

実際に、Movable Typeの書籍やウェブサイトには「Movable Type界」という言葉が使われることがあります。一つのソフトウェアに対して「○○界」と呼称する様は、他のソフトウェアではあまりお目にかかりません。

 

これらの、非常に優れたなマーケティング活動が、日本におけるシックスアパートとMTの知名度・普及度の拡大を実現したのだ、と考えています。