「手ぶらで帰ってくるな」
大学生の頃、ものすごく極貧だった時期があり、アルバイトで生活費と学費を稼いでいました。
いくつかアルバイトをこなしていたのですが、その一つに、
「青山のピアノレストランでウェイター」
というものがありました。
忙しいお店で、厳しい店のママさんに、徹底的にしごかれたのを良く覚えています。
ママさんが口を酸っぱくして教えてくれたことの一つに、
「絶対手ぶらで帰ってくるな」
という教えがありました。
これは
「お客さんに食事のお皿を届けた後、何もせずにそのまま帰ってくるな」
という意味です。
どういうことか、少し詳しく解説してみます。
僕たちウェイターの仕事は、料理ができたときにお客さんへ運んだり、食事が終わったお皿を下げたり、空いているコップがあったらお水を注いだり、お客さんが気持ちよく食事ができるようにするのが仕事でした。
料理ができあがったとき、僕たちウェイターは、キッチンからお客さんのテーブルまで、その食事を運びます。運んでいるときは、両腕ともお皿でいっぱいです。
お客さんのテーブルに着いたら、「お待たせしました」と声をかけ、料理をサーブします。
これで、キッチン→テーブルの仕事は完了です。
サーブが終わったら、当然次のお客様に料理を届けるために、再びキッチンへ戻ります。
この、テーブル→キッチンへ移動するとき、お皿で一杯だった両腕は、フリーの状態になっています。
ママさんは、このときの状態を指して
「ぼーっとして、キッチンまで帰ってくるんじゃない」
とよくウェイターを叱っていました。
帰ってくる間に、食事が済んだお客さんのお皿を下げたり、水が少なくなったコップに水を注いだり、何か仕事をして帰ってきなさい。
そうじゃないと、
「食事を出すのに1往復」
「空いたお皿を下げるのに1往復」
「水をコップに注ぐのに1往復」かかる。
お客さんに料理を届けた後、帰ってくるときに、きちんと目配せができていれば、コップに水を注いで、その後、空いたお皿を持って帰れるじゃないか。
1往復で、3つの仕事ができるでしょ。
そうやって、動きをシャープにしていきなさい。
そんなことを言っては、ウェイターたちを厳しく教育していました。
僕は、この「手ぶらで帰ってくる」ことがたびたびあったので、厳しくママさんに怒られ、「1アクションで、複数の仕事をする」ということを、徹底的に叩き込まれました。
これが意外に難しく、ぼーっとしてキッチンに帰ってきては怒られ、しごかれ、ひーひー言っておりました。
この「手ぶらで帰るな」という言葉、今から思うと
- 1つのアクションで、無駄なく、効率よくタスクをこなすこと
- 常に目配せをして、周囲の状況を察知すること
という、「仕事の基礎の基礎」を、教えてもらっていたのだなあ、と気がつきました。
今でも仕事が忙しくなったときほど、この修行時代を良く思い出します。
けれども、歳をとっても、ときどき1つの仕事を終えた瞬間、「ぼーっ」としてしまう自分がいます。いかんいかん。
自戒の意味を込めて、思い出しながらブログに書いてみました。
ママさんは既に亡くなり、お店も既に存在しません。でも、あのときの経験は、今でもとても役に立っています。
本当にありがとうございました>ママさん
コメント(2)
Noriyo Asano
わー、これわたしも大学生時代に某ファミレスでバイトしてた時に
言われた記憶がある言葉ですよー。
サービス業界では、有名な教えなのかもしれませんね。
にっく
おお、のりよさんからコメントが(嬉
飲食業界共通なんでしょうかね?
飲食業やサービス業のオペレーションって、短い時間にどこまで効率的にルーチンやタスクをこなすか、本当に考えられているケースが多くて、とてもためになりますね。
仕事の手順とか段取りとか、とても参考になります。
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