僕が大好きなコラムニストの一人に、ボブ・グリーンと言う人がいます。
写真は、ボブ・グリーンの代表的なコラム集「チーズバーガーズ」。
1990年代の初期、大手出版社が次々に書籍を翻訳出版していたので、ご記憶の方も多いと思います。一時期はタレント的な人気を得て、NTTのコマーシャルにも登場しました。
当時の人気は、多分に広告代理店が仕掛けた気配がぷんぷんしており、
「アメリカの良心を綴る名コラムニスト」
といったイメージ戦略がそこかしこに感じられました。現在は、残念ながら、ある事件がきっかけで、長年勤めた新聞社を辞めてしまい、第一線を退いています。このため、ボブ・グリーンに批判的な意見もよく見かけます。
が、それでも彼のコラムには感動させられるものが多かったのも事実です。
当時、僕は地下鉄で「書き続ける理由」というコラムを読んでいて、あまりに感動して人目はばからず涙を流してしまったことがありました。
彼のコラムは、名もない町の、名もないストーリーにスポットライトをあて、なんの変哲も無い普通の人々の「輝いた瞬間」や「絶望に打ちひしがれた瞬間」を描写していて、読み応えがありました。
今の言葉で言う「セレンディピティ(何かを発見する能力)」にあふれたコラムが多かったように記憶しています。
ところで、最近(2009年8月)、シックスアパートさんが、日本版の「blogs.com」を開始しました。
最初は、なんとなく眺めていたのですが、
「これは今までのブログメディアと切り口が違う」
と感じ、それからは毎日チェックしています。
blogs.comは、明らかにほかのブログメディアと異なる「編集方針」を意識しているように思えたからです。■ブログメディアにありがちな「バラエティ的なネタ」に頼らない編集方針
巨大なアクセスを集めている人気のブログメディアに良く見られる編集方針として
「分かりやすく、共通の話題にしやすい面白ネタ」
を主軸に取り上げている、というものがあります。
たとえば
「1kgもあるハンバーガーを作った、おばかな人とおばかな写真」
あるいは
「発明マニアのおじさんによる珍妙な新型自転車」
とか
「恋人が別れ話の末に行った想像を絶する復讐手段」
などなど。ビジュアルやシチュエーションが
「非常に分かりやすく」 「突っ込みを入れやすい」
ネタを集めて、コメントや写真を掲載して公開、というものです。
これはこれで、世界中の面白いニュースを集める大変さ、があると思うのですが、誤解を恐れずに言うと
「テレビのバラエティ番組と極めて近い内容、編集方針」
と言えます。大多数の読者に「ばかだねー」とか「なんじゃこりゃ」と思ってもらい、突っ込みを入れてもらう編集方針です。
いくつかの巨大ブログメディアは、明らかにこういった「世界びっくりバラエティニュース」のような内容となっています。
一方、blogs.comはそういう
「分かりやすいシチュエーションやビジュアルのおばかさ、突拍子も無さ」
も存在しますが、それよりも
「一見するとなんでもない記事だけど、よくよく読み込むと、とても面白い・深い内容」
を持つブログ記事を集めて、再編集しているのが特徴です。
「ビジュアル的なインパクトは無いけれど、よく読むと、面白さ・発見が見つかる」
ような記事が散見されます。
読んでいると、突然自分の感性や思考をまさぐられるような内容のものがあったり、気軽にくすくす笑いながら読めるネタであったりと、取り上げるネタの内容が、バラエティに富んでいます。
■人間と、人間が巻き起こす事象に対する「好奇心」
blogs.comを見ているときに僕が感じたのは、ボブ・グリーンが持っていた
「セレンディピティ=人間と、人間が巻き起こす事象に対する発見の視点」
と同じものでした。
言葉を変えると
「人間に対する好奇心がベースになっている」
と言えるかも知れません。
ブロゴスフィアから面白そうな話題や記事を集めて紹介する、というと、一見誰でもできそうに思えますが、かなり高いレベルで編集担当者のアンテナ、情報収集力、好奇心が求められるはずで、想像するよりずっとタフな編集能力を必要とすることでしょう。
日本版blogs.comのプロデューサーを務めているのは、ガジェットネタ系ブログメディア「GIZMODO」のゲスト編集長も務めている、いちるさん。
ブログメディアにおいては百戦錬磨なので、当然、バラエティネタ系の編集方針にもいけるはずなのに、あえて既存のブログメディアと異なる編集コンセプトを持ってきたのではないかと想像しています。
こういう編集方針をとると、相当に「しんどい」ような気がします。この編集方針は、編集者の「知識量」、「好奇心」、「洞察力」など、編集者自身の守備範囲がかなりダイレクトに出るからです。最初はページビュー面でも苦戦しそうな気がするのですが、バラエティにとんだ良質なブログを紹介すると言う意味では、今までにないブログメディアだと思うので、ぜひがんばって欲しいなあ・・・と思うのでありました。




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