Movable Typeか、WordPressか? --「MT vs WP」論に参加してみる
この記事は「MTはソーシャルの夢を見るのか?」の続きです。予定では先にソーシャルメディアについて論考するつもりでしたが、先にこちらから手をつけます。
先に結論を書くと、
- MT→WPの流れは、本質的には「再構築の重さ」に起因する問題ではない。
- 『MT=CMS』というマーケティング戦略、機能性を追及してきたシックスアパートのスタンスから、『ブログを使うなら、これからはWordPressかな』というイメージが相対的に増加してきたせいではないか
- 2009年1月の時点なら、ブログはWordPress、CMSに使うならMovable Typeの方が使い勝手が良い
というのが僕の感想です。以下、論証します。
WordPressの使い勝手のよさ
当ブログはMTで作成していますが、元々はWordPressでブログを構築しており、数年来のWPユーザーでした。WordPress→Movable Typeへ移行したという、昨今のブロゴスフィアのトレンドとは逆のパターンで運用しています。
(主に仕事でMTを利用しているため、日ごろから慣れておこう、という狙いがあります)
最初にWordPressを選んだ理由は
「世界的にシェアが高いから。選ばれ、支持されるには理由があるはず」
という点と
「日本ではみんなMTを使っているから、あえてWPを触ってみたい」
という、ちょっと天邪鬼な理由の2点でした。
数年間触った感想は
素晴らしい
の一言。素晴らしさはいろいろとありますが
- テンプレートの入れ替えがとても楽。
- テンプレート資産、プラグイン資産が圧倒的。ある程度英語が分かれば非常に使いやすい
- インターフェースが秀逸。ユーザーの操作性を前提に考えている
などなど。
純粋に「ブログ」を書くのであれば、とても「楽しい」システムです。WordPressを考えるとき、この「楽しい」というのが結構ポイントのような気がします。
新しいテンプレートファイルを見つけて、わくわくしながらテンプレートを入れ替える瞬間の楽しみ、あるいは、プラグインで機能強化するときの面白さは、あまりMTで感じることはありません。
ここでは「機能論」とか、「性能論」はあまり関係ないように思います。
MT にもテンプレート入れ替えシステム(スタイルキャッチャー)は存在するのですが、MT3→4の過程でテンプレートの構造を自分変えたためか、 WordPressに比べればテンプレートファイルは極少、と言ってよい状態でしょう。(2009/01現在)結果として、MTのテンプレート入れ替えシステムは、あまりその魅力を発揮できていないように思えます。
WPは、テンプレートやプラグインなど、豊富な資産を作成してくれるファンを世界中に増やしました。
「テンプレートファイルやプラグインが多種多様で、選ぶ楽しみがある」という事実は決定的です。
こういう第三者によるアセットが豊富である、ということはそれだけで絶対的なアドバンスです。
あたり前すぎて恐縮ですが、これこそがWPの圧倒的な使い勝手のよさにつながっています。
MTが、商用CMSとしては後発ながら(商用CMSはMT以前に沢山ありました)、どんどん商用CMSとしてのシェアを上げていったのは
- 低コストであること
- 日本語情報を豊富に配布したこと
に起因しています。別な言い方をすると
「WPが、世界のブログユーザーに対して行ったこと」
を
「MTは、日本のCMSユーザーに対して行った」
ため、日本ではMTがCMSシステムとして、圧倒的な数的優位を手にしたと言えるでしょう。やはり、数は力なのです。
動的生成はデメリットなのか?
一部では「アクセスが多いサイトでは、動的生成だと重くなるのでは?」という指摘がありますが、個人的には「?」と感じます。
そもそも動的生成で重くなるようなメガブログは数えるほどしかなくて、大部分のブログは、負荷コストは問題にならないものが多数であることを考えると、あまり説得力が無いのではないか、と思います。
ウェブサイト制作会社として導入を行うなら、動的生成による負荷デメリットや、phpにつきまとうセキュリティメンテナンスなど、諸々考えるべきことは増えますが、個人レベルでそこまで意識する必要があるシーンは、正直数えるほどでしょう。
大多数のブロガーにとっては、
WPの魅力>動的生成のデメリット
である以上、動的生成と静的生成の優劣で、メリット・デメリットを論じるのはあまり意味がないように感じるのです。
WPに乗り換えるユーザーは「再構築」の、面倒くささ、苦痛がきっかけになりこそすれ、それが乗り換えの根本の原因ではないように見えます。
Movable TypeとWordPressの機能比較論に意味はあるのか?
もう一つ、「WPの機能やメリットは、MTでも同程度持っている。もしMTのデフォルトでない機能も、プラグインで解決できるものばかりだ」という論があります。
例としては
「再構築がそんなに苦痛と言うけれども、再構築を軽減化するプラグインは沢山あるよ」
あるいは
「MTでも動的生成ができるよ。WPに負けないよ」
などなど。それはまったくそのとおり、なのですが、一般のユーザーから見ると、大事なのは
「CMSを強調しているMT」
と
「ブログツールとしての使い勝手を追求するWP」
の違いの方がより重要ではないでしょうか。
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例えば:
ある、繁盛しているAというカレー屋さんがあります。
そこは、カレー本来の魅力を追及していて、メニューはきわめてシンプルです。
その近所にBという「カツカレー屋さん」がオープンしました。
カツカレー屋さんのカレーは、A店に負けずとも劣らない、本格的なものでした。
カツも非常においしく、カレーはカツに合うようにうまく調合されています。
カツカレーのおいしさから、B店は負けずとも劣らない繁盛店になっています。
A店の常連さんは、そんなB店とB店の常連さんを見て、こういいました。
「B店のカツカレーぐらい、いつでも食べれるよ。肉屋のC店に行って、カツを買って、A店のカレーに合わせれば、B店に負けないぐらいおいしいカツカレーが食べられるんだから」
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ちょっと極論で恐縮ですが、たとえばこんなイメージの話です。
そもそも、B店の常連さんは「B店ならおいしいカツカレーが食べられる」という、B店が提案するメニューのファンになっているわけです。
A店のカレーと、カツを別々に買って、合わせれば確かにカツカレーを食べられます。しかし、普通に考えて、わざわざ別のお店で買い物して、カツカレーを作る人は(皆無とは言いませんが)少数派ではあるでしょう。
大多数の人間は「カツカレー=B店」という「ブランドイメージ」ができているからこそ、カツカレーを食べたくなったときにB店へ行くはずです。
ちょっと寄り道でしたが、要は
「ユーザーは、機能の優劣で判断しているのだろうか?」
ということです。
おそらく大多数のWPユーザー(特にMT→WPを検討しているユーザー)は
- 「MTはCMSを志向していて、難しくなっているのではないか。ブログやいろいろな書籍を見ても、プロのツールに思える」
- 「WordPressはブログシステムなんだね。デザインテンプレートの入れ替え楽しいね。」
という観点から移行しているのではないか。
「機能の多寡ではなくて、ブログを志向しているか、CMSを志向しているか」
という、機能的・マーケティング的なメッセージゆえに
「ブログを書きたい人はWPへの移行を検討している」
ように思えるのです。
これは完全にマーケティング寄りの話だと考えています。
MTは、「サイト制作会社、スタッフたち」へ「CMSとしてのブランドイメージ」を強調し、「CMSとしてのシェア」を確保した結果、「ブログシステム」としてのブランドイメージを相対的に低下させた。
結果的に
「ブログと言えばMT」
というイメージは
「ブログと言えばWP」
というイメージに替わり、それがGoogleトレンドの結果に現れている、というのが僕の考えです。
たとえば、2009/1/20時点で、Googleで「ブログ MT」「ブログ Movable Type」「ブログ wp」「ブログ WordPress」で検索した結果は以下のとおりです。(いずれも日本語のサイトに限る)
- ブログ MT
ブログ MT に一致する日本語のページ 約 2,130,000 件
- ブログ Movable Type
ブログ Movable Type に一致する日本語のページ 約 2,380,000 件
- ブログ wp
ブログ wp に一致する日本語のページ 約 1,680,000
- ブログ WordPress
ブログ WordPress に一致する日本語のページ 約 3,430,000 件
このように、すでに僅差ながら「ブログ=WordPress」というイメージが「ブログ=MT」というイメージを上回りつつあるのです。
ビジネスとしてのツールはMT
じゃあ、ウェブ制作とツールとしてはどうなのよ、というと、現時点ではMTの方が導入しやすいです。
理由は
- 静的生成はやっぱり便利。システムのリプレースやバージョンアップ、不具合修正の際、ウェブサイトに影響がほとんどない。静的にhtmlを生成しているから、システムとウェブサイトの実体ファイルを完全に分けられる
- 最後に「けつを拭く」企業がいるのは安心。MTのライセンス費用は、個人的には「パッケージ代」とは思わず「保険金」だと思っている。
- 日本語によるCMS的Tipsが多い。企業に対して導入する場合、細かいレベルで注文が来ることが良くあり「オープンソースだからそこまではできません」と言い切れないことが多い。力技でも良いからなんとかしなければ、と言ったときに、即時に日本語で情報収集や情報交換ができる環境は、他のシステムにないメリット。オープンソースCMSに対してオリジナルパッチやコアコード修正を行うよりはるかに安く、メンテナンス性がよいことが多い。
- 今のMTは「ブログ」よりも「CMS」「フレームワーク」的な機能面に重きを置いているため、ビジネスユースにマッチしている(純然たるウェブCMSとしてみた場合、やや中途半端なことは確か)
- 代替テンプレートやコールバックAPIが整っていて、手を入れやすい
などなど。「ウェブ制作ツールとしての日本語の情報量」が、WPよりも多いのがなんといってもメリットです。
alt-tmplしかり、コールバック関数によるテンプレート・プログラムコードの入れ替えしかり、MTはやっぱりすみずみまで考えられて開発されています。設計思想のレベルの高さを随所に感じます。
ただ、それはCMSツールとしてのレベルの高さで、ブログシステムとしてのものではない気がします。
結局は志向性の問題だが・・・
というわけで、再度結論を書きますと
- MT→WPの流れは、本質的には「再構築の重さ」に起因する問題ではない。
- 『MT=CMS』というマーケティング戦略、機能性を追及してきたシックスアパートのスタンスから、『ブログを使うなら、これからはWordPressかな』というイメージが相対的に増加してきたせいではないか
- 2009年1月の時点なら、ブログはWordPress、CMSに使うならMovable Typeの方が使い勝手が良い
となります。
それゆえ、なおさら「現在のMTが目指すところはブログなの?CMSなの?」と困惑してしまうのです。
もしMTがブログおよびブロガーを狙うなら、もっともっとブログ機能を充実させて、使い勝手を良くするべきだし、CMSに特化するなら、MTからブログ要素を薄めて、代わりに別なブログシステムをリリースする(たとえばTypePadブランドをオープンソースのブログシステムとして、WordPerssにぶつけるなど)したほうが良いのではないでしょうか。
個人的には、MTにはCMSとしてのコアツール、という位置づけで、がんがん突き進んでいってほしい。 フレームワークとして取り回しがより柔軟で、DB操作を利用して、あんなこともこんなこともできる、便利なツールになってほしい。
と思ってしまうのです。でなければ、他のオープンソースCMSの日本語情報が増えるごとに、結局
・ブログならWordPressだよね
・CMSならJoomlaやDrupal、MODxだよね
と言う風に、より明瞭なコンセプトを打ち出しているシステムに負けてしまうのではないか。
今のように「ブログツールとしても、CMSシステムとしても使える」と、2つの機能を同時に追うことに、メリットはあまり無いような気がするのですが・・・。
※1/23、結論を先に記述する修正を行いました。
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